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エッセイ Archive

『キネマ旬報』11月下旬号発売。

今回はアゴダ・クリストフ原作の『悪童日記』を取り上げた。

本文にも書いたが、私はノンフィクション系、自然科学や評論を好む人間で、中々フィクション系の書物には手が出ない。この本の前評判は出版当時聞いていたが、読むことは無かった。

表紙-1

第二次世界大戦の頃の子供は、あの大戦が無くともどこも似たり寄ったりで、現在でもアジアの子供達の中には、ゴミの山から金目の物を漁って、出稼ぎに出ている父に代わり、母や幼い兄弟を助けているのである。

戦後間もない頃、イタリア・リアリズム映画に『首輪のない犬』というのがあった。

廃墟と化したイタリアの街を戦勝国のアメリカの老夫婦が観光で訪れる話だが、首輪の無い野良犬と化した子供達が、手にビンの破片や缶の蓋を握りしめ、この老夫婦を瓦礫の中へ追いつめるシーンで終わっている。

本文-2

子供は何処に居ても、夢想家である。

木の上に住む場所をこしらえれば、戦国時代の難攻不落の城となったり、宇宙船の母船になったりする。

『週刊新潮』の表紙絵を担当した谷内六郎さんの作品は、その子どもの心を描いて秀逸であるが、『悪童日記』も子供の内面へと迫った作品である。

手に取りたい方はここ

 

 

赤瀬川原平の芸術原論展、開催

期間 10月28日~12月23日
会場 千葉市美術館

先日、亡くなりました原平さんの回顧展です。

昨年、ニューョーク近代美術館で開かれ、反響を呼びました『ハイレッド・センター回顧展』の後を受け、今回の赤瀬川原平個展です。

タイトル-1

間違えたのではありません。表紙が逆さまです。

個展の前日に亡くなりました原平さんの通夜が、北鎌倉のお寺さんで行われました。

関係者のみのささやかな葬儀ですが、それ故にお別れの言葉が届いた葬儀でした。

不謹慎な感想かもしれませんが、御寺の庭を抜けて本堂に入る。何処かNHKのテレビ番組『ゆく年、くる年』を思い起こさせる通夜の晩でした。

通夜-2

まだ誰も死が身近に感じられなかった若い頃、誰言うとはなしに、この中で一番、長生きするのは原平さんだよねと、話していた事を思い出しました。

遺影に目を向けると、あのはにかんだ笑顔と共に、低く落ち着いた声で語りかけて来るようにも思えました。

原平さん、俗世での出会い、有難う御座いました。ご冥福をお祈り致します。

通夜-3

『赤瀬川原平の芸術原論展』カタログに、60年代の私との共作作品が載っております。
ピストルを描いたのが私で、このピストルは連続射殺犯の永山が使用したピストルで、改造銃です。
獄中の永山がこの絵を見て、何故、私の使ったピストルを知っているのだと、面会に来た弁護士に訪ねたそうです。何故かは、秘密にしておきませう。

カタログ-4

もう一つは、70年に始まりました、現代思潮社の『現代詩手帖』の表紙絵ですが、現代詩手帖の文字が原平さんの作品です。この様なカットの仕事も細かくて、それは千円札を模写して0円札を作り上げる力に繋がっているのです。

カタログ-5

実は原平さんは、私共夫婦の仲人なのです。当時、0円札裁判が始まっておりましたから、有罪になりますと、私共は犯罪者を媒酌人に選んだ事になりますが、三島さんの言葉ではないですが、犯罪と表現は隣り合わせですから、私共は心配はしておりませんでした。
その経緯や原平さんのお嬢様、桜子ちゃんなどと連れ立ち、旅行に行った思い出などを綴りました。
その旅行を8ミリで撮りました作品が三作品あります。いずれかの機会に上映したいと思います。

エッセイ-6A

今回の個展の見どころ幾つかを紹介しますね。
0円札の制作の為に千円札を拡大し、それを手書きで描いた事が判りますし、当時の思想界を俯瞰した、伸坊さんとの合作作品に描かれている吉本隆明さん。この肩書を読まれると吹き出します。また同じ作品に、つげさんの『ねじ式』の主人公が描かれておりますが、これもよく見ますと吹き出します。
原平さんの作品には、密やかな大人の笑いが隠れております。それをご覧になるのも、原平作品を鑑賞する時の密やかな楽しみでもあります。

文学-6

こちらの展覧会の方が先に始まっております。町田市民文学館の『尾辻克彦×赤瀬川原平』展です。
原平さんはマルチな活動をされた作家で、そこが若い表現を志す人に愛されるところなのですが、文字の世界でも各出版社の新人賞を総なめにし、芥川賞まで貰っちゃうだけでも開いた口が塞がらないのですが、その上に『老人力』でベストセラーを出し、流行語大賞にも選ばれてしまうのですから、開いた口の塞ぎようがないのです。

最後のお別れに御棺に横たわる原平さんの顔を見ましたら、原平さんもちょっと口を開けておりました。本人も口が塞がっておりませんでした。

『キネマ旬報』10月下旬号発売。

もう、次の号が発売になっておりますね。

今回の「読む、映画」は、『サスペクト』(悲しき容疑者)です。

ドイツが統一して、残るは韓国しか無い状況が、この国の脱北物映画にあるのだが、実話を基にして作られた作品では無いのに、みょーにリアリティが過剰で濃いのは、ハリウッド製アクション映画に近づこうとしている側面もあるのだが、裏に南北統一といった悲願が、北にも南にもあるからだろう。

表紙-1

また、リアリティが濃いと感じる理由の二つ目には、中国と同じく韓国も、日本と同じアジア圏ということもあるのだろうし、国が近いと言うこともあろう。

香港アクション映画には、この様な緊張を私達日本人に与えないことからも、国の距離も含めて、近、現代史以前から、複雑に絡み合った歴史があるからだ。

本文-2

加藤泰監督の「男の顔は履歴書」なども、心が引き裂かれ、吐き気が襲ってくる不思議な映画体験をしたのも、そのような歴史が両国に横たわっているということである。小説や漫画作品にも「脱北物」というジャンルが確立しているのか、隣国へ行って調査、観察をしてみたい。

手に取りたい方はここ

 

『キネマ旬報』9月下旬号発売。

今回は、アクション映画『バトルフロント』を取り上げた。

表紙-1

シルベスター・スタローン制作、ジェイソン・ステイサム主演の映画で、そつなく仕上がっている作品である。

文章-2

アクション映画ファンとしては、料理で言えば、もう少しエグ味が欲しかった。

手に取りたい方は下記アドレスへ。

http://www.zassi.net/detail.cgi?gouno=37564

 

 

 

 

キネマ旬報7月下旬号に映画エッセイ。

英国へ出立、直前まで書いておりました原稿です。

今回はアレハンドロ・ホドロフスキー監督、脚本の『リアリティのダンス』を取り上げました。

表紙-1

監督自身の自伝的作品ですが、マッチョな父親とグラマラスな母親の熱い家庭に生まれた子と言うのは、どんな育てられ方、育ち方をするのだろうと観ていましたら、麻酔無しで歯の治療を受けさせられるのですね。
私は嫌だなー。痛みを止める麻酔の注射も嫌ですから、歯の先生はホトホト困っています。
早く、麻酔注射もしない、痛くない医療へと変わって欲しいですね。

本文-2

本を手に取りたい方はこちら

 

映画の詳細はこちらです。

http://www.uplink.co.jp/dance/

 

月刊『東京人』にエッセイ寄稿。

ケンブリッジから東京へ戻って参りました。

グレートブリテン及び北アイルランド連合王国へ行く前にアップ出来なかったニュースを上げます。

『ガロ』と『COM』、両漫画雑誌の特集です。

手塚治虫さんが『ガロ』の後を追い『COM』を発行、某大手新聞の社会面のトップに、「あなたはガロ派かCOM派か」との見出し記事が載りました。

表紙-1

東映動画の動画課のほゞ全員が、面白い漫画雑誌だと、『ガロ』を購入していた事を記憶しております。東映動画には藝大卒の方々が多く、先ごろ、アメリカの美術館で回顧展が開かれ話題になりました『ハイレッドセンター』の一人、高松次郎もまた、動画課に勤務していた時期が御座いますし、関東の美術大学のほゞ全校の卒業生が働いておりました。

その雑誌に私が投稿、掲載、翌月に週刊誌のグラビアに取り上げられ、つげ義春、佐々木マキ等とテレビ、雑誌、学園祭などに引っ張り出されるとは思ってもおりませんでしたし、全共闘からポスターを依頼されたり、大阪万博、大阪空港のトヨタの看板に起用されるなど、そんな仕事を数年後にするとは、考えてもみませんでした。

ページ-2

『ガロ』系の作家は、他の娯楽系漫画雑誌で活躍されていた作家とは、メディアの使い方、使われ方が違いますね。
私ですと画家へ、杉浦日向子だとNHKのレギュラー・コメンテーター。フランスの文学賞を受賞し、作家と役者の内田春菊。糸井重里はコピー・ライター、南伸坊ですと絵も文もたつコメンテーターですし、蛭子能収はタレントへ。みうらじゅんは仏像ブームを起こして、プロデューサーとなり、漫画の領域以外の仕事をしている場合が多いです。

この雑誌では、東映動画に居た一アニメーターの視点から、当時のメディアの交代劇などを書いております。『赤色エレジー』の主人公のような契約社員の問題など、メディアが取り上げるのは20年ほどの後になりますが、もうこの時代に始まっております。
将来、六十年代から七十年代への時代の変わり目の、労働現場の様子を知りたければ、あるいは日本、世界を考える時の教養の一助になれば、作者としてこれほどの喜びはありません。

人気の特集だそうです。手に取りたい方は下記アドレスへ。

東京人2014年7月号

『東京人』を発行しております都市出版の粕谷さんがお亡くなりになりました。

後年、東北への視察旅行、出版記念パーティーにお招き頂き、感謝しております。

深沢さんの著作問題など、大変な時期の中央公論を支えた方だと後日、知りました。

葬儀の日、ぎっくり腰になり、お別れの言葉を伝えられず残念です。

東北旅行での、イカ焼きと日本酒の酒宴、私の中では印象深い飲み会となっております。

ご冥福をお祈り致します。

 

『キネマ旬報』6月下旬号に映画エッセイ。

映画を観なくなって久しいが、テレビを買い替えたら、BSやCSなどチャンネルがいっぱいあって、その中の映画専門チャンネルがお気に入りで、毎晩、酒を飲みながら映画漬けの日々を送っている。

表紙-1

今回はジャ・ジャンクー監督の『罪の手ざわり』を取り上げた。
最近、中国で起った事件をつなげた作品で、導入部から、車を止めてドライバーから金品を奪うチンピラを情け容赦も無く撃ち殺すシーンで始まるから、へぇー、中国は銃社会なんだと、毎年、訪れていた中国への新鮮な驚きを体験したし、『さらば狼』や『ダーティーハリー』、加藤泰監督『皆殺しの霊歌』のような、社会的手続き無しのテロリズムに近い、男の断念の美学を感じた。
この導入部で、監督の力量が判るし、監督の意図とは違うが、汚な不細工キャラで、アジア男のマッチョなアクション映画を撮って欲しいと、プロデューサー目線で作品を鑑賞した。

連載-2

本を手に取りたい方はこちら

映画の詳細はこちら

『俳句四季』2月号発売中。

2月のエッセイは、2月の悪口で、1月の冬と3月の春に挟まれた、季節のハッキリしない、月の日数も中途半端な月だと書きました。

表紙-1

しかし2月は節分もあるし、バレンタインデーもあり、他の月に劣るようでもありませんね。2月さん、御免なさいね。春はもう、目の前で、何処かで春が生まれている月でもあります。

絵-2

東京四季出版のホームです。

 

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