今回はアゴダ・クリストフ原作の『悪童日記』を取り上げた。
本文にも書いたが、私はノンフィクション系、自然科学や評論を好む人間で、中々フィクション系の書物には手が出ない。この本の前評判は出版当時聞いていたが、読むことは無かった。
第二次世界大戦の頃の子供は、あの大戦が無くともどこも似たり寄ったりで、現在でもアジアの子供達の中には、ゴミの山から金目の物を漁って、出稼ぎに出ている父に代わり、母や幼い兄弟を助けているのである。
戦後間もない頃、イタリア・リアリズム映画に『首輪のない犬』というのがあった。
廃墟と化したイタリアの街を戦勝国のアメリカの老夫婦が観光で訪れる話だが、首輪の無い野良犬と化した子供達が、手にビンの破片や缶の蓋を握りしめ、この老夫婦を瓦礫の中へ追いつめるシーンで終わっている。
子供は何処に居ても、夢想家である。
木の上に住む場所をこしらえれば、戦国時代の難攻不落の城となったり、宇宙船の母船になったりする。
『週刊新潮』の表紙絵を担当した谷内六郎さんの作品は、その子どもの心を描いて秀逸であるが、『悪童日記』も子供の内面へと迫った作品である。
手に取りたい方はここ。
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