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2020-06

田名網敬一個展「記憶の修築」

期間 7月4日(土) – 26日(日)

会場 NANZUKA 2G (渋谷パルコ2F 2G内)

チラシ-1

この度、NANZUKAは、田名網敬一の新作個展「記憶の修築」を開催いたします。

本展は、NANZUKAおよび渋谷パルコ2F 2G内のNANZUKA 2Gにおいて、同時期開催の企画展となります。(個展紹介文より抜粋)

可愛い立体作品ですね。多くの平面作家が立体へ手を出すと、茶器を作る方向へと行きますが、田名網さんは違いますね。

どこかブリキ・ゼンマイ人形の懐かしさがあります。ゼンマイを巻くと「プップッピッ・ドゥー」なんて歌い出しそうです。

 

田名網敬一個展「記憶の修築」

期間 7月11日(土) – 8月8日(土)

会場 NANZUKA (渋谷2-17-3-B2F)

チラシ-2

田名網は、アメリカの心理学者ジョン・コートルの著書『記憶は嘘をつく』(1997)にある「人が無意識のうちに記憶をつくり変えながら生きている」という説を引用しながら、自身の記憶が生き物のように常に変化を遂げながら作品に影響を与えている様子を研究し続けています。

その40年に渡る夢日記の一部を収録した自身の著書『夢の悦楽』(2017)では、夢の視覚言語化を試みることで、自らの脳内イメージを客観的に捉えようとする田名網の創作活動の神秘を垣間見ることができます。(紹介文から抜粋)

詳しくはこちらで・・・。

 

 

越村勲著『USKOK AND WAKO: A Social History Study of Frontiersmen at the Ends of the Eurasian Continent』

この本は、クロアチアの初期近代史に関する著者の社会史的研究の結果です。

これは、世界史の理論的枠組みの中でアドリア海のウスコクを探索する比較研究であり、ウスコクと和光の類似点と相違点(中国/日本の海賊行為)を検討するという基本的な目標があります。

2015年、著者は「16世紀と17世紀の海上商人と海賊-アドリア海のウスコクと東シナ海の和光」というタイトルのシンポジウムを開催しました。彼はクロアチアと日本の家庭/家族協同組合の現象について興味深い比較結果を得ました。

この本には、彫刻家イヴァン・メストロヴィッチが「コゾシャ」と呼ばれる日本人アーティストのグループに与えた影響についての章も含まれています。(本書紹介文から引用)

面白い視点ですね。日本の海賊も広く活躍していたのですね。ジョニー・デップさん主演の映画『パイレーツ・オブ・カリビア』がヒットしました。

クロアチア語版と英語版での出版です。日本語訳は出版しないのですか?

チラシ

クロアチアと聞くと日本から遠く、交流の薄い国と言うイメージがありますが、どうしてどうして、マルコ・ポーロはクロアチア出身ですし、社会学者のイヴァン・イリイチも我が国での翻訳書籍が多い作家です。

『浦和レッズ』で活躍した元サッカー選手のトミスラフ・マリッチさんもクロアチア出身ですし、2本のチェロだけでクラシックからポピュラー・ミュージックまで演奏する『トゥーチェロズ』なども、日本のコマーシャルで見ない日は無かった時があります。

令和生まれの私ですと女優のアリダ・ヴァリさんで、出演した映画『第三の男』のエンディング・カットで、トレンチ・コートを着て並木道を歩くシーンに驚いた記憶があります。

真っ直ぐ歩くのです。女優さんは歩く訓練もしているのだなぁと画面を見て感動しました。素人に歩かせると曲がって来ますし、カメラから去って行く後ろ姿も、見られたものではありません。

モデルさんも花道の歩きを訓練しますが、この『第三の男』のエンディング・カットは長いです。アリダ・ヴァリは曲がらずに並木道を歩いております。その演技に乾杯です。

それにクロアチアの首都『ザグレブ』で開催される映画祭は、映像関係者であれば知らない人は居ない映画祭です。手塚治虫氏も『ジャンピング』で受賞しております。

それから、社会主義国としてもともと統一する前から、民族的な自立が強かったクロアチアですから、ソ連邦崩壊の遠因を受けてクロアチア独立宣言から始まった『クロアチア紛争』が起こります。まだソ連最高議会がソ連共産党の活動を禁止する決議をする前ですから、噂、千里を走るではないですがソ連同盟国での混乱は早いです。

当時、日本はまだバブル景気の余韻に浮かれていましたから、橋の中ほどで兵士に撃たれて重なるように倒れた敵同士の恋人の報道写真「現代のロミオとジュリエット」などを見ても、ジュリアナ東京で踊る騒音に消されてしまったのではないでしょうか。

越村さんは、日本大使館の邦人国外避難勧告を聞かず、クロアチアに残ったのですかね。その頃でしょうか、ニューョーク在住のアメリカ人アーティストから、世界の漫画作品を特集した雑誌を頂きました。

その中に『クロアチア紛争』の民族浄化大量虐殺のコマ絵が載っていて、処刑人が泣き叫ぶ少年の手を掴み、橋の欄干に連れて行き首を切る場面で、橋の下の川には多くの死体が川下へと流れて行く様子が描かれておりました。越村さん、怖くないですか。勇気ありますねー。

詳しくはここをクリック。

TDC 2020

期間 06月22日(月)~08月29日(土)

会場 ギンザ・グラフィック・ギャラリー

チラシ-1

数多くのハイファッション・ブランドとのコラボで世界でも傑出した存在、M/M(Paris)が、ギャラリー・ラファイエット・シャンゼリゼの新しいロゴ・VI・タイプフェイスの仕事で今年のグランプリを受賞、これら受賞12作品とノミネート作品を中心に、タイポグラフィを軸にしたグラフィックデザインの優秀作品150点あまりを展覧いたします。(本文はホーム紹介文より抜粋)

ぜひご来場ください。

以前、若い人の間で丸文字が流行りましたよね。息子は小さい文字を書きますが、今の若い人はどんな文字を書きますか?

キューバ・メキシコ交流400年記念個展開催68

支倉常長さん一行、遣欧使節団がキューバ、メキシコの地に降り立って400年にあたる6年前にキューバ・メキシコで個展を開き、帰国後、ご報告を兼ねてブログを更新して参りましたが、他の要件が多くなり途中で更新が出来なくなりました。

現在、お知らせの多くがコロナ流行に合わせて自粛となり、ブログにてお知らせする事が出来なくなりましたので、その間に支倉使節団400年記念、キューバ日本大使館主催の『トラディショナル・モダンな日本美術 林静一の美人画展』の続きを掲載することにしました。

タイトル-1

講演の最後は『イカイック』で国営の映像スタジオとなりますか、その一部門を担うアニメ部門での講演です。

以前、中国が経済開放政策へとカジをきり、アニメスタジオとの交流目的で中国へ伺いましたので、社会主義国のアニメスタジオの雰囲気は判っているつもりですが、興味は膨らみ胸は高鳴ります。

イカイック-2

それと言うのも、社会主義国のアニメ産業は、好不況の影響がなくアニメーターは精神的にも安定して仕事が出来、優れた技法のアニメ作品を生み出すことが出来ます。

例えば長編アニメの『雪の女王』やガラス職人とコラボした『シンデレラ』、水墨画の作家達と組んだ中国の『牧笛』等、資本主義国では製作費が高騰して制作不可能な作品を産みだすことが出来ますから、期待してしまいます。

ここが政治、経済体制の違う国の先の読めない処です。トランプさんがカリカリするのも判りますね。

我が国からは、東映作品や手塚さんの作品、久里さんや和田さんの個人フィルム作品などを上映しました。手塚さんや和田さんの個人フィルムは、キューバのアニメ制作者達から大うけでした。

講演-3

アニメーターは床と平行な机で動画を制作しています。これは日本も同じですが、ディズニースタジオは違います。欧米の画家がイーゼルにキャンバスを立てて絵を描くのと同様、動画も立てた動画机で描きます。

アニメーターの方、「うなじ」が色っぽいですね。

アニメーター4

動画机に円いスリガラスがはめ込まれて、タップで固定された動画用紙を上下に動かし、作画をしております。

我が国は四角いスリガラスがはめ込まれていて、タップで固定された動画用紙を動かし、作画を致します。

動画机-5

ディズニースタジオでは、立てた動画机に、『イカイック』と同じ円いガラスがはめ込まれ、タップがガラスと同じ机に固定化され、それをクルクル回して作画を致します。

ですから『イカイック』のアニメーターは、ディズニースタジオと東映動画の両方を取り入れた作画方法となっております。

なぜ、そうなったか・・・、聞くのを忘れました。

私-6

『絵コンテ』を見ている私です。
アニメ制作には、作品の全てのカットが描かれた『絵コンテ』があります。また、そのカットの下に秒数も書かれております。

以前、故鈴木清順監督が、何故、アニメ作品の『絵コンテ』には秒数が書き込まれているのか、訊ねられた事があります。これは実写と違いアニメは、全カット、アニメーターが描かなければならないと申し上げておけば、納得して頂けるのではないかと思います。

アニメ制作者の立場から申せば、実写映画は文字のシナリオで映像を撮っております。黒沢さんなどは絵コンテを描いておりますが、文字のシナリオで実写映画作品を撮る監督がほとんどです。感心します。ちゃんと尺も合うのですから。

映画の画面作りは、撮影監督の仕事なのですね。

色付け-7

また、漫画とアニメ、両表現の行き来が容易です。東映動画でも原画に漫画家の古沢日出夫さんが居りましたし、白土さんの『赤目プロ』の漫画アシスタントが、私の班におりました。

漫画のコマは、アニメのカットですから、容易に仕事の行き来が出来る訳です。
漫画表現とアニメ表現は血縁関係に近く、以前、漫画の表現史を美術から繋げたフランス人評論家のお話をしましたが、この様なことが判っていた方ではないかと思います。

作画した動画に色を付けております。
以前はトレス・彩色の方が、透明なセルに動画をなぞり、線を引き、色を付けておりましたが、現在、殆どの国のアニメプロダクションは、コンピュータで色を付けているのではないでしようか。

アニメはデジタルになる前に一段階、製作費を削減する段階があります。それはトレス作業を簡便化する作業です。

ではその作業とはどの様な作業であったか、動画用紙の線は、どの様にセルに写し取ったのか・・・。調べて頂けると嬉しいです。
現在、100円ショップに、過去のディズニー作品が売られております。その作品の中から『101匹わんちゃん大行進』と『王様の剣』の線を注意深く見て下さい。
お判りですか、それまでのディズニースタジオの線と違う事が、でもアニメーターはこの線の特徴を生かしたアニメを考えております。

テレビに娯楽の王者を譲り渡すまいと、製作費を切り詰めた世界のアニメ界の王、ディズニースタジオの苦悩が判るでしょう。

東映動画もディズニースタジオに続いて、セルに動画の線を写し取る機械を導入しました。動画を描くとき、強い線を引かなければならず、手首が痛くなった事を覚えております。

現在はコピー機で動画をデジタル化して、取り込んでおります。

編集-8

編集部門です。動画が色付けを終わり、カットとして完成したのを繋ぎ合わせている所です。これもコンピュータです。

80年の初め、フランス、アヌシーの映画祭を訪れると、会場前はコンピュータ業者のアニメ制作ソフトの売り込みテントが並んでおりました。謳い文句は「あなたが寝ている間も、あなたの忠実なしもべとなって働きます」と書かれてありました。

背景-9

背景も現在はコンピュータで制作されます。我が国では松本大洋さんの『鉄コン筋クリート』が、その始め辺りではないでしようか。

以前、歩き、走り等の動くカットに使用した背景は、ご覧の様に横長の背景で、動画に合わせて少しずつ動かし撮影しました。懐かしいですねー。
この班は、コンピュータを出来るだけ使わない作品作りを推し進めております。

コンピュータはトレス・彩色の技術者を削減しましたが、悪い事ばかりではありません。多くの煩雑な作業を省いてくれました。最近の『スパイダーマン』などは3Dアニメで、背景のビル街をデザイン的に処理し、ゴチャゴチャ書き込む背景から、一歩抜け出しております。ナノ時代の説明は細かくなりますね。

プレゼント-10

アニメ部からプレゼントを頂きました。有難う御座います。

時間が無いので、彼らから我が国の制作体制について質問がありましたが、それに答えられず、そそくさと『イカイック』を後にしましたが、今、この場を借りて申せば、『イカイック』の制作体制は、監督に原、動画から色彩、背景、音響まで、全部、責任が集中しております。
これでは作品作りが動き出すと、監督は仕事に忙殺されます。

作品作りの工程を管理する制作部を作り、そこが全カットの動きを把握し、スタジオ内に誰でも判る大きなカット表を張り出すと良いでしょう。
これを見れば自分の今の仕事がどの様な進み具合であるか判り、全体の進み具合も判ると思います。古いようですが、皆が作品に集中出来る方法です。

監督-11

スタジオ所長と記念撮影です。素晴らしい作品が生まれる事を楽しみにしております。

作品-12

送られて来たアヌシーのアシファ協会のカタログで、『イカイック』の作品を見つけました。
社会主義国同士だけではなく、広く世界のアニメ産業や作家、映像ファンに見せて下さいと、所長にお話したのが通じたようで嬉しいです。

キューバ・メキシコ交流400年記念個展開催67

支倉常長さん一行、遣欧使節団がキューバ、メキシコの地に降り立って400年にあたる6年前にキューバ・メキシコで個展を開き、帰国後、ご報告を兼ねてブログを更新して参りましたが、他の要件が多くなり途中で更新が出来なくなりました。

現在、お知らせの多くがコロナ流行に合わせて自粛となり、ブログにてお知らせする事が出来なくなりました。その間に支倉使節団400年記念、キューバ日本大使館主催の『トラディショナル・モダンな日本美術 林静一の美人画展』の続きを掲載することにしました。

タイトル-1

個展開催のセレモニーを終え、ホッとしたのも束の間。三ヶ所で講演会を開く事になっております。

サイン会-2

会場でロッテさんの『小梅キャンディ』をお配り致しました。すっぱい味はキューバの方は慣れておられると思います。

小梅-3

キューバでも日本の漫画は広く知られておりまして、僕達も漫画を描いて発表をしたいのだがどうすれば良いかと相談を受けております。

キューバには、子供向けや青年向けの漫画雑誌は発行されていないのですかね、カストロさん。

相談-4

別の日の講演会場です。

ここでは日本の美人画と言うか人物画についてお話させて頂きました。

会場-5

質問も受けております。

質問-7

絵と関係無いですが、何か武道をやっているかとの質問もあり、日本には広く知られた柔道に剣道、空手に弓道、それに女性が習う薙刀や槍術が御座います。薙刀を馬鹿にしてはいけませんよ。「おみ足―」なんて足の動脈を切られたりしますから・・・油断、出来ません。他校との交流試合で、薙刀部にコテンパンにやられた経験をお持ちの剣道部の方は多いのでは。

私が武道家に見えますかね。

講演-6

ここでも、ロッテさんの『小梅キャンディ』をお配り致しました。そっと手を出されるのですが、この奥ゆかしさ私は嫌いではありません。

小梅-8

この会場での芦田さん、決まっております。この後、遣欧使節団400周年記念行事の何かおありですかね。音楽家の方も見えられておりますから、公演があるのでしょうか。

芦田さん-9

講演後のパーティーです。会場には中庭が在ります。

表の扉を開けると奥に広く建物があるのは、京都の町屋に似ています。

庭があって池があるなどは、家に居ながら外へ出た気分になれて、コロナでは中庭の良さを心に刻み込んだのではないでしょうか。

パーティー10

猫ちゃんは何処にでも居ます。キューバの猫は、ニャンともいえません。

猫-10

ザ・ピーナッツの『月影のキューバ』が聞こえてきます。踊りませうか・・・。

 

古いリンクですからまだ、繋がっておりますか・・・・。

NHK番組『視点・論点』 『『伝統の美人画』中南米を行く』です。

ノーリッジで行いましたトークイベントの英訳が、米国のThe Comics Journalに載っております。

ハバナ個展の記事です。

Habana Times の記事です。

Radio Rebeldeの記事です。

キューバの日系の方々のサイト、CUBANO NIKKEI の記事です。

Cuba Cooperation France の記事です。講演の様子ですが私、暑さでボロボロになっております。

Habana Culturalの記事です。洋装のこの絵が人気です。後ろの椰子の木がキューバの方々の心を捉えたのでしょうか。

メキシコでの個展です。

主催のベラクルス州立大学の新聞の記事です。

AGN VERACRUZ Periodismo puntal y con sentidoの記事です。

Organización Editorial Mexicana社の’El Sol de Leon’の記事です。

lado.mxの記事です。

EL HERALDO DE VERACRUZ’からの記事です。

‘Oye Veracruz CULTURA’からの記事です。

La noticia en caliente’からの記事です。

‘PUNTO Y APARTE’からの記事です。

‘la veracon’からの記事です。

『現代マンガ選集ー破壊せよ、と笑いは言った』刊行。

漫画史の先達、清水薫氏が引いた骨太の漫画表現史=笑いに、若手評論家、斎藤宜彦氏が挑んでいる。

欧米では漫画史の背骨は、レオナルド・ダ・ピンチの外界の観察から続く新たな自然界の発見となっていて、絵画と同じ発達史に組み込まれている。

それは概ねコマ絵の写実度であり、それにつれて物語も精度と密度を高めている事は、拙著『Ph4,5グッピーは死なない』でも書き記していて、欧米の漫画史は、日本の清水氏の「笑い」を中心に置いた歴史観と大きく違っている。

チラシ- 1-2

それが大きく揺らぐのが『コマ絵の写実度』が上がる『劇画』の誕生であり、リアルになるほど笑いが薄れて行く時代の『笑い』を斎藤氏が格闘していて、谷岡氏や山上氏の笑いを取り込んで、時代による笑いの質の変化を書いている。

欧米に於いても近年の漫画評論は、漫画を成り立たせている構造に向けられ、ティエリ・グルンステン氏の『マンガのシステム』などを読むと、さほど漫画の「コマ絵」の表現力は作品に影響を与えないと言うような事を記している。

ヨーロッパで漫画が注目され、評論の対象として見られるようになったの70年辺りではないかと思うが、漫画を特集した雑誌にフランスの批評家だと思うが、漫画についての小論を載せていたと記憶している。評論家の名は失念しているが、小論に目を通した私は、これは凄い評論だと驚いたことを憶えている。

今までの美術評論家も目に止めなかった絵画史から読み解く腕は、漫画評論の枠を超えた広がりを見せていた。今もこの評論を超える漫画論に御目にかかっていないが、ティエリ氏とこの評論家の間には、西欧美術史からの枝分かれとしての回路が有るか無いかの違いがあり、ティエリ氏のは美術史から分かれてきたその後の、成熟した漫画についての考察である。しかしやはりコマ絵は、コンピュータの絵画ソフトが発達しても、重要な役割を担っていると私は思う。

チラシ-1

その続きで申せば、この巻に収録された私の『火の玉怨花』の「コマ絵」を評して斎藤氏は「ヘタウマ絵」へとつなげている。作者の私はうーむと頷くしかないようだ。

また収録作『火の玉怨花』を発表当時の二色刷りを再現している事に、編集諸氏の努力に頭を下げさせて頂く。

詳しくはここで。

 

近藤ようこ著『ゆうやけ公園』発売。

近藤さんのコマ絵の女性は、写実的で目はあまり大きく描かれていない。

もう一つ特徴的なのは、近藤さんは絵の人よりも言葉の人ではないかと思うことだ。 漫画は絵と言葉から成り立っている。それがバランス良く作品に定着している作家はまれで、大方、どちらか得意な方へ偏り、作品を読むと気付く事がある。近藤さんは言葉の方が得意な作家ではないかと思う。

つげ忠男さんも絵より言葉の人ではないかと思う。コマやセリフの展開を見ていると、文章を読んだ読後感を感じるのだ。

はっきりと私は絵が判らないと言った思想家は吉本隆明氏で、そう断わって漫画評論を書いているのは立派だ。

チラシ- 1

ゆうやけ公園』の「あとがき」を読むと、冒頭「近年のことを考える時、それが二〇一一年の東日本大震災の前だったか後だったかを基準にしている。」と書き記していて、後半に「なんの因果だろう。現在、日本も海外も新型コロナウイルスで混乱の最中である。」と書き続け「このコロナ禍の前と後がまた新たな区切りになるのだろうか。」と書いている。

実はコロナより厄介な「スーパー耐性菌」が生まれているらしく、もう感染している人がいるそうだ。これが蔓延すると耐性菌を殺す薬が無く、人類はお手上げになるらしい。

人類が絶滅することは無いと思うが、生き延びる数は少ないと見られている。 アメリカの19世紀までの文明の中で暮す「アーミッシュ」なる宗教集団は生き延びるだろうが、多くの都会人は高層マンションの部屋で死絶えるかもしれない。

『現代マンガ選集―表現の冒険』刊行

中条省平氏の『解説』を読むと、60年代の漫画表現『劇画』の登場時代を過不足ない目配りで書き記している。(厳密に言えば、中条氏は私より9才年下であるから、60年代と言うより70年代に20代の多感な時期を過ごしていたことになり、『ガロ』ブームや学生運動の盛り上がる時期を体感していない世代であろう。)

時代を丸ごと掴み出し、読者に理解してもらう事は中々難しいことであり、その時代の苦楽を体験した者がまだ心臓の鼓動を止めていない時代であれば、その時代の『○○選集』なるものを編纂することはストレスの高い出版事業に違いない。

60年代の住宅の少ない時代に家を建てれば、玄関脇は客間、応接間と呼ばれる部屋があり、そこの飾り書棚に並べられる書物は百科事典や文学全集、世界や日本の美術全集などであるが現在、若い人が建てる家にはそのような部屋が無いことは磯田光一氏の著作に書かれてあるが、若い作家が創作に行き詰まった時に、選集物は未来を指し示す一助になるに違いなく、また大衆化時代の知の体系として、孤独な作業であるが標本箱に作家を整理する歴史化作業も、大切な出版メディアの仕事であろう。

チラシ- 1

小説も何度も全集、選集が組まれているが、あの作家が入っていない全集、選集物の価値は低いという、お乳欲しがる赤子のような発言を20代の頃によく聞いたものである。

その『文学全集』物で名高い筑摩書房が刊行する『選集物』であるから、是非、将来、日本漫画全史なるものを手掛け発売して頂きたいものである。

ひょっとすると漫画は、小説と違い世界全史などが編める表現かもしれず、欧米ではそのような書物の先駆けが生まれているのではないかと思うし、また、それは映像表現にも言えるのではないかと思う。

本シリーズは、6月以降、毎月一冊、刊行する予定であると言う。

 

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