- 2021-08-07 (土) 20:04
- お知らせ
安部慎一の人と作品 『律義さ』にふれての中で高野慎三氏は、「ともかく、新人作家としてある種の表現の余裕すら感得されたのである」と書いている。
私も当時を思い起こせば、阿部氏の作品に高野氏と同じような余裕を感じていて、『ガロ』も劇画ブームと言った狭い意味での雑誌を超えて、安定した漫画雑誌として業界に受け入れられるのではないかと思えた。
まだ漫画業界が若いのか、小説の賞のように作品を芥川賞と直木賞に分ける事も出来ていない処に、漫画雑誌『ガロ』の不幸があった。
美代子さんとはお会いした事が無く、阿部氏の作品から読み取ることでしかないが、素晴らしい女性である事は間違いないと思える。
『美代子田川気分』から浮かび上がってくるのは、長い時間をかけた阿部夫婦の愛の物語ではないかと思う。
エストニアの映像作家、プリット・ピャルン、オルガ・ピャルンの『ダイバーズ・イン・ザ・レイン』を見ている時に、ふと、阿部さんの漫画のコマ絵が浮かんできた。
西欧の街並みや潜水夫の昔の恋人等、阿部さんが描いたらこんな感じになるのかもしれないと思った。大雑把に言えば、線の質と描き込む線の量が似ていた。
阿部さんの漫画作品も、実写映画よりアニメの方が、雰囲気が伝わるように思える。
漫画作品を並べれば、各作家の個性的なコマ絵がまず目に飛び込んでくるはずで、その作品を映像化すると考えれば、画像をどう他の作品と差別化しなければならないか、考えるのがディレクターの最初の仕事になり、悩むところである。
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