日本語のロックに挑んだ『はっぴいえんど』のデビュー作の制作現場を撮った写真集です。
この写真集のタイトルが『ゆでめん』となっています。
若い方には判らないでしょうが、実はこの『はっぴえんど』のファースト・アルバムのカバー絵を私が担当しました。
そのジャケットに描いた建物の看板が、『はっぴいえんど』のファンの方々に親しまれ、ファースト・アルバムと言わず『ゆでめん』と呼ばれる様になったそうです。
私は引っ越しをしたり、旅行へ行きますと、絵を描いておりますから資料として写真を撮る習慣があります。
この『ゆでめん』と書かれた大きな看板を掲げた小さな木造の工場も、そんな資料散策の時に発見した建物です。
オブジェとしてアートしていると、近づき中を覗こうとしますが、窓には黒い布が垂れて中の様子が判りません。
音を聞こうと耳をすましますが、何の音も聞こえて来ません。唯、屋根の上の煙突からは、忙し気に煙が噴き上げておりましたから、何か製造されているのは間違いはありません。
建物自体が面白いので写真に収めましたが、やはり気になります。夕方の退社時間に行けば工員とか事務系の社員が出てくるのではと見に行きますが、誰一人、出て来るものは居らず、配送の車も社員の車も在りません。静まり返った建物が在るだけです。
ここから引っ越すまで気にはなっていましたが、『ゆでめん』と言う町工場は何を作り、出来上がった製品を何処へ売っているのかさっぱり判りませんでした。
それから後に、テレビ企画で青春を過ごした町への出演依頼があり、『ゆでめん』が在った場所へ行きましたが、もう木造の建物もその上に輝いていた『ゆでめん』の看板もありませんでした。
同じ様な建物が中国との文化交流で行きました時に、北京の『万里の長城』近くの公園に在りました。
『ゆでめん』の看板は有りませんが木造の建物で、ここも窓には黒幕がかかり、中が覗けない様になっており、音も聞こえて来ません。
何の建物が判らず、テレビカメラ、音声のスタッフとウロウロしていた時、真っ直ぐこの建物に向かって歩く人民服姿の若者を発見しました。
青年は建物の扉近くの小窓を上げると、何やら小さい紙片を差し入れました。するとその小窓から長方形の箱が出て来て、若者はそれを受け取ると公園のベンチに腰掛けました。
若者は長方形の箱を開け、箸を使って食べ始めましたので、これであの建物の意味が判りました。昼食時の公園で働く労働者の弁当配布の建物だったのです。
近づいて「美味しいですか?」と訊ねると、若者は「旨いわけ、無いだろうと」と私を真っ直ぐ見つめて答えました。
私の後ろにテレビカメラが在りましたから、この位の不満は言えるようになったのだから、中国は経済開放を逆戻りする事は無いと確信しました。豊かになれる者から豊かになれの号令は、野火のように中国全土に広まったと思います。
手に取りたい方は下記アドレスへ。
はっぴいえんど|歴史的名盤となったデビュー・アルバム誕生の現場を記録した『野上眞宏 写真集 「ゆでめん」』8月5日発売 – TOWER RECORDS ONLINE
暑いですねー。昨年からの仕事がコロナで止まっております。
コロナの商品開発部はアイデアマンが揃っておりますね。
今回、発売した『デルタ株』など、各国の不買運動もなんのその、爆発的に売れているではないですか。
日本経済復興に、コロナ商品開発部の優秀なコロナをスカウトしたらどうですか。
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