- 2019-07-19 (金) 12:59
- お知らせ
期間 7月19日~29日
現在、放映中のNHK朝ドラ「なつぞら」の主人公のモデルは奥山さんです。
東映へ入社してからのお付き合いは長いのですが、奥山さんの人生についてお聞きしたことは無く、へぇーと言うエピソードが一杯です。
奥山さんは元気な方でホント、ドラマの題名『なつぞら』のような人でした。東映を辞めて行った人々などの目配りを忘れない、姉御肌の方でした。
私が東映に入社した半年後あたりから、大きくアニメ業界が変わります。手塚治虫原作の『鉄腕アトム』が放映されテレビアニメがアニメ業界の主軸産業になりました。
その頃のアニメ業界を描いた作品に『赤色エレジー』があります。
私の居た頃には組合があり、作品の冒頭に幸子が団結の鉢巻きをしたまま家に帰って気付くシーンがあります。まだ社会へ出ていない方や労働組合の無い小さな会社に入られた方は、判らないエピソードです。
『ガロ』に作品を描き始めたのが1970年ですから、所得倍増政策から総中流社会へと移行する時期で、三井、三池炭鉱の合理化闘争などが遠い昔の事のように思われ、変わり行く総中流社会の日本へと知識人の関心は向けられて行きます。
東映動画で60年代に起こった事は、その前にアメリカ・アニメ業界で起こり、私達、日本アニメ産業へは、いつ起こるのだろうと動画組合員の皆が身構えていた処にテレビアニメブームが始まり、動画課のアニメーターと同じ数の契約者が入社してきました。
アングレームフェスティバルへご招待、頂いた時、摂書『赤色エレジー』の時代背景について語りましたところ、フランス・アニメ産業に従事している若い方から、自分達の国と同じ状況が日本でも起こっていた事に驚き、感動して頂きました。
これは日本の産業では一番、早い契約社員の登場ではないでしょうか。その前は、臨時雇い、臨時工と呼ばれていたような気がします。
当時、映画評論家の佐藤忠男氏が、映画産業労働者の実態を調べられていて、東映動画へも見えられておりますから、ひょっとすると当時の映画雑誌『映画評論』に連載されておりましたから、東映動画の契約社員の事も書かれておるのではないかと思います。
正規社員と契約社員の職場での問題を討論するテレビ番組が登場したのは、私が『赤色エレジー』を書いてから20年後ではなかったかと思います。
『赤色エレジー』では正確に描きませんでしたが、学生運動と共に語られたヒッピーやフーテンなどと一緒に、アニメ業界での仕事を求めて彷徨うフリーター、一郎の話となっておりますし、73年の『恍惚の人』ブームやそれ以前の、ポックリ寺巡りのツアーブームによる、老人介護の問題も浮上し、幸子の家庭も父を介護する設定となっております。
今年、某大学教授の方が「今や、たやすく労働者を解雇出来る時代になってしまった」と語られていたのが、耳に残っております。
アニメ史を専攻される若き映像評論家は、我が国のアニメ産業の確認の程、お願いしますよ。
60年代の東映動画でブームになったのは、中国の紅衛兵運動と同じく壁新聞ブームで、アニメーターは絵が描けますから、絵入りの壁新聞が貼りだされ、奥山さんなどは毎日、違った服で動画スタジオへ出勤しますから、それを毎日、描き、壁新聞へ載せる男が居りました。
壁新聞には『米帝国資本主義的華美服装、消費社会的犬、造反有理』等と書いてありました。
奥山さんの笑いは豪快で、あっははははーと大声で笑う。
自分がモデルのドラマを見て、天国で豪快に笑っているのかしらん。
振り返れば東映動画の女性達は、宮さんの奥さんのバブさんも含め、豪傑が多かったですね。
ジブリの宮さん、奥山さんの画集、早く出して下さい。
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