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山田英生編『老境まんが』

イギリスのロンドンで、日英文化交流の講演を行った。

内容は創成期の『ガロ』についてで、最後に会場に集まった皆様から質問を頂き、その中に後ろの席で手を上げていた青年から、「何故、あの時期に、日本の漫画家達は劇画を描く様になったのか」との質問があり、中々良い質問だと思いながらも、答えの要因が多くあり、どれも正解に思え、言葉を濁して「判らない」と答えるにとどまった。

劇画が60年代にブームとなり、それまでの少年雑誌の市場から漫画は、青年層を対象にした新たな市場へと拡大する可能性を秘めた創作活動であり、それ以前で言えばファッション界での東京オリンピックの制服を担当した石津 謙介氏等の、青年層に向けた服装の革命『ピーコック革命』が上げられるし、70年代に入って日本の若手デザイナーが次々とパリコレで注目されたのも、青年層のファッション革命と捉えて良いだろう。

その後、寛斎さんの後楽園スタジアムで開かれたファッション・イベント『寛斎元気主義』では、有名俳優などが寛斎さんの服を着て登場、スタジアムを埋めた観客から世界へと届く歓声が上がり、私には『ジャパン・アズ・ナンバーワン』の雄叫びの様に聞こえた。

先進国で起こった学生運動も、青年期の大人達への異議申し立てと考えれば、十分、青年文化を確立する要因となるだろうし、劇画家の多くが子供の頃から親しんだ大衆娯楽の王様、映画なども、娯楽劇画の作品を見れば影響は大きいと言える。

また重要なのは、音楽であろう。アメリカの良識テレビ番組『エド・サリバン・ショー』で、激しく腰を振る下半身を写さなかったエルビスや、それに続くポール・アンカ等のポップス若手歌手に、ノーベル賞を受賞したポプ・ディラン。イギリスのビートルズ等、若者文化を不動のものとしたのではないだろうか。

それに書き手が青年であれば、その年代の心理を十分知っている世代が語り描くのが自然と言った全うな意見も有りだ。

其れ迄の文化は、大人と子供の二つの文化しか無く、戦後の世界の先進国で本格的に始まったのが、思春期を含む若者文化であると言えば、了解して頂けると思う。

無論、文学での夏目氏の『坊ちゃん』など学園ドラマとして読めるし、戦前から大きな流れでは無いが『新青年』や『令嬢界』等、文芸で切り開いた道はあったと言える。

チラシ-1

その一翼をになった劇画も、書き手である青年が壮年になり、終末医療のお世話になる老年期に入った今、山田氏の『老境』を巡っての作品集は的を得てると言えるだろう。

表紙に使われている永島氏の老人の絵は、中々見事である。

水木氏とつげ氏の両剣豪武蔵は、アメリカ映画の西部劇スターのジョン・ウエイン氏が演じた最後のガンマンに似て面白い。

西部劇、或いは日本の剣豪の対決が映画から消えて久しいが、それは何故か?
時代に合わなくなったと言っても良いが、それではナノ・レベル時代の答えとして相応しくない。

一対一の決闘が無くなったと言えば、答えに近いかもしれない。

では、何故、一対一の戦いが有ったのか・・・答えは読者に探してもらおう。

手に取りたい方は下記アドレスをクリック。

筑摩書房 老境まんが / 山田 英生 著 (chikumashobo.co.jp)

 

 

【神戸発掘映画祭2021】2021年10月16日(土)~31日(日)

会場:神戸映画資料館

1プログラム(各回入替制)一般:1400円

23日(土)13:30 新発掘アニメーション『海の宮殿』日活/1927年/政岡憲三/9分など。

23日(土)15:00 レコードトーキー作品集『文福茶釜』伴野文三郎商店/1932/大石郁雄/7分など。

23日(土)16:20 田中鐵商店アニメコレクション『ちょん切れ蛇』など。

予約・お問い合せ 神戸映像アーカイブ実行委員会(神戸映画資料館内)

電話:078-754-8039 メール:info@kobe-eiga.net

正岡さんの作品上映は今日です。うっかりしておりました。

 

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