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内島すみれマンガ評論集『トートロジー考』

内島さんは漫画作品も描かれるのですね。

「あとがき」に漫画はコマの並びやオノマトペに吹き出しの言葉等々、多くの表現、評論の入り口があると書かれている。

確かに漫画に始まった事ではないが、演劇や映像でも、照明や音響まであるから何処を切り口にしても良く、照明さんに作品を選ばすと、〇〇賞を貰った作品と違う作品が候補に上がったりする。

活字が全盛だった頃は、活字作品が優位であったが、写真や映画が大衆の耳目を集めると写真や映画の評価を巡り小説との間に溝のようなものが出来た。フローベルの小説『ボバリー夫人』などは確か、挿絵などの映像化を禁じた遺書を書いたと読んだことがある。

20世紀に入ってもディズニー作品が名作を次々とアニメ作品化すると、映画化を批判する児童小説家の発言がアメリカで起こった。ディズニープロも内部にハリウッドの労働争議を抱え、台頭するテレビ・メディアにジリジリと追い込まれていたから、弱り目に祟り目であった。

批評の内容は、グリム童話の『灰かぶり』を読んでも、ディズニーのアニメ作品『シンデレラ』を、子供は思い浮かべてしまうと言う真っ当な意見であった。

私も70年代に入り、短歌作家とのコラボを出版社から頼まれたが、短歌作家の方からキャラクター入りの挿絵は控えるよう頼まれた。映像は記憶に強く残るらしく、童謡の絵を頼まれた時にも、子供の頃に見たその童謡の絵が浮かび、記憶の画像との格闘を迫られた覚えがある。

チラシ-1

その後も私の好きなアメリカ作家のジョーン・アービング氏が、ハリウッド映画界に挑戦状を叩き付けた。『私の作品をハリウッドごときが映画化なぞ出来る訳がない』と啖呵をきり、ハリウッド映画界もその喧嘩を受けて「面白い奴だ、涎を垂らして映画化を御願いしに来ると思ったら、中々骨のある奴が現れた。見てろよ、映像作品の方が小説よりも面白いと大衆は言うぜ」とのバトルが有ったかは知らないが、皮肉にも彼の小説は次々と映画化されている。

それ以降、純粋、大衆芸術を問わず、小説で閉じ、他のメディアとのコラボをしない小説家は出ていない。小説家も丸くなって来たのだろうし、映画の次にテレビが広く家庭に入り、その次に誰でも広く文章や画像を発表するインターネットが現れ、小説家もネット小説などが現れ、書く場所が広がっている事も事実である。

その時代に評論の立ち位置とは中々難しい。80年代に加藤典洋氏が「評論は難しい」との発言をし、その危機感を感じない威勢のよい評論家から「何を言っている、ボケたのか」等、批判が相次ぎ、加藤氏の問題を共有する評論家は現れなかった。

現在、批評とは商業用に通用する評論だけが流通する時代となっていて、嘗て評論が持っていた絶対的な価値へと向かう思考の運動、自然科学を模した論文の様な批評は、青空市場で骨董品と同じく店を出すしか場が無くなっているのも事実である。場を間違えて意見を言うと、この男、何、喚いて自論を尺度に物を言っているのだと捉えかねない時代である。

そのようなエッセイを出版社が発行する小雑誌に書いていた女性作家が居られたが、編集氏は書評を頼みずらいのではないかと思う。評論マニアの私には、刺激的な評論が生まれないのではないかと危惧する時代ではある。

 

珍しく60年代『ガロ』で活躍した仲佳子さんの評論があります。作品から立ち上る、海からの匂いが好きでした。

私の作品も書かれておられます。手に取りたい方はここ

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