今月はドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の『ボーダーライン』を取り上げました。
アメリカ大統領選で頭角を現しましたトランプ氏が、「メキシコとの国境に高い塀を築け」と発言し、支持層の低所得者白人層から喝采を浴び、それまで支持していたヒスパニック層が離れて行きました。
ヒスパニックからすると「もともとアメリカは私達の土地だった」となりますから、メキシコでは子供が人形にお菓子を詰めて棒で人形を叩き、お菓子を取り出すお祝い行事がありますが、今年は人形がトランプ氏になっていたそうです。
コロンビアの麻薬組織をアメリカが制圧したら、それがメキシコへとなだれ込んで来たような状況がメキシコで起きていると、メキシコ在住の方が話しておりました。
アメリカとの国境沿いの街フアレスが舞台ですが、殺人が起ってもニュースにならないほどの街だから当然、撮影許可が下りなかったと言います。
アクション映画は、その時々の緊張した政治、経済の問題を取り上げてきました。そこがアクション映画の特徴であり、魅力ですから、制作現場もアクション映画そのものでせう。
嗚呼・・、六十年代の映画『ビバ・マリア』や岡本太郎さんが壁画を描いていた頃のメキシコが懐かしい。オリンピック前年辺りから、メキシコはおかしいですね。
死んだ父の部屋でサッカーボールを手に、佇む子供が印象的でした。アクション映画好きは見とくべきでしょう。
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