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英訳の作品集です。

昨年、発売になりましたが、告知する時期を逸しておりました。

収録作品は、私の作品集に収録されております『花に棲む』、発表当時、女性週刊誌『女性自身』に再録されました『赤とんぼ』に『山姥子守唄』、未完の『黄金花粉』です。

和開きで読むようになっていまして、これは日本の漫画作品を洋開きで発売したところ、外国の漫画ファンから抗議があり、日本の漫画は和開きで読むべしとなりました。コマの動きが洋開きにすると逆になり、作家の意図するドラマの流れが伝わりずらくなるからです。

 

表紙-1

何故かスタイリッシュ、クールな表紙ですね。
以前の『赤色エレジー』も独特のセンスがありましたが、今回も、中々日本人では出てこない色調です。

作品-3

『花に棲む』ですが、オール・カラーの作品で、80年代にNHKでテレビ・ドラマ化されております。

発表時期を考察しますと、60年代、最後までカラー作品を撮らなかった黒澤監督が『天国と地獄』でパート・カラーの作品を発表、70年代に発表した『どですかでん』でオール・カラーの作品を発表する時期と重なります。
しかし、鈴木清順監督が多くの作品で色の実験を行っていたから、黒澤さんはやり難かったでしょう。

テレビも70年に白黒放送からカラー放送に変わります。

また、漫画界を見ますと、フランスからオール・カラーの漫画雑誌が発売されるなど、先端の漫画表現はカラー化の時代を迎えておりました。

勿論、カラー漫画は、『リトル・ニモ』の石版画を使用した贅沢な作品を始め、ベルギーの漫画家エルジェの連載漫画「タンタンの冒険」やアメリカ・マーベル社のヒーロー作品と以前からありましたが、このフランスから発売されたカラー漫画雑誌は、それまでのカラー漫画作品とは一歩も二歩も抜きん出た質感のコマ絵で構成されております。

このレベルの上がった、言葉を言い換えますとリアリズムの上がったコマ絵は、絵画の世界潮流、スーパー・リアリズム絵画の退潮時期とほぼ重なります。

日本で言いますと水木しげるの『ゲゲゲの鬼太郎』のタイトルバックの精緻な茅葺屋根の風景画から、つげ義春の『ゲンセンカン主人』へ、10年の間を置いて発表された大友克洋の『アキラ』まで、この間に池上遼一、石井隆の作品を挟んだ10年の幅が、また日本の出版事情がオール・カラーを阻んでおりますか゛、『アキラ』は精度と密度の上がったコマ絵で展開されておりまして、当時の漫画評論家の多くが彼に、正規の美術大学でデッサン、写実を学んだのかとの質問をしておりますから、大友のコマ絵が他の作家より抜きん出た模写力があった事を裏付けるエピソードでしょう。

このリアリズムの流れを変えたのが望月峯太郎の『バタアシ金魚』のコマ絵で、劇画のコマ絵をへたうま絵と方向を転換します。

そのへたうま絵に再度、カラーリアリズムの流れを呼び戻そうとしたのが拙著『夢枕』ですが、オール・カラーの漫画作品は欧米に於いてはあたりまえ体操ですが、日本は小説と競って映画化、テレビドラマ化、グッズ化などに活路を見出しておりますから、コストが掛かるカラー作品が日本漫画の本流となることは無いでせう。

『花に棲む』は、両極性障害を病む母親と息子の日常を描いており、ある漫画家、評論家は、林静一はアメリカの作家、ロバート・クラムに近い作家であると述べておりますし、フランスの作家、ジョルジュ・バタイユにも近いとは、まだ誰も言ってはおりません。

裏-2

この本は裏から外国版の体裁となっており、作品集に収めました私の文章の英訳と美術史家ライアン氏の作品解説が載っております。

文章-4

『薊光』は、作品集に収めた自伝色の強いエッセイです。題名の『薊光』をどう訳すか、ライアン氏は悩んだと思います。

私の作品には『薊光』の他に詩画集の『紅犯花』や画集の『儚夢』など造語が多いのですが、我が国は中国から輸入した漢字を模して国字を生み出しておりまして、「峠」なんて上手いですよね。この血が私達の使う言葉に脈々と流れております。

ひょっとするとこれから、英語を使う事の方が多くなる私達日本人の和製英語が、世界基準の英語になるかもしれませんよ。

母と並んだ小学生の私が写っておりますが、母が見たら何て言いますか・・。
被害者意識の強い病の母ですから、「嫌だわ、こんな不美人の私を載せて、世界中の笑いものだわ」何て、言うかもしれません。

山姥-5

ライアン氏の作品解説です。
『山姥子守唄』の解説図版に歌麿の山姥と金太郎の絵を載せております。

歌麿は晩年、金太郎と山姥の母子像を多く描いておりますが、歌麿の心に何が去来したのでしょうか。
また、金太郎と山姥の母子像は、山に住んで居ると言うより江戸都市に住む母子像に思えます。

その根拠として、辻氏が『奇想の系譜』で取り上げた鎖鎌を持ち岩場に立つ山姥像で、がっしりと岩を掴む山姥の足の指と長く伸びた爪のリアルさが、山で暮らす山姥の生命力を垣間見た気がすると当時、この本の書評で書いた覚えがありますが、歌麿の山姥と比較しますと、歌麿の山姥は洗練されております。

都市の母子像を描いた歌麿。それは江藤淳氏が『成熟と喪失』で描いて見せた日本近代の母子像へと繋がり、私が密かに自負して描いた我が国の60年代後半の母子像から「イエスの箱舟」事件などへと広がります。20代の私に向って「若いのに良いところに目を付けていたな」と、声をかけたくなります。

手に取りたい方はこちらです。

売り切れていたらアメリカ・アマゾンで注文して下さい。

You Tubeで、手塚治虫氏や私などの日本漫画を紹介している青年が居ります。
御覧になりたい方はこちらです。

 

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